自己点検
2026年度版 保険代理店の自己点検、今年は何を見ればいい?
今年の自己点検は、去年の回答を写す前に「今年の案内」を確認するところから。チェックシートと提出方法、規程・実際の業務・確認資料の照合、前回の改善事項の確認まで、進め方を整理します。
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「今年の自己点検をお願いします」
保険会社から案内が届いて、まず去年の回答を探す。ファイルは見つかったけれど、今年も同じ内容でいいのかは分からない。設問を読み始めると、「これ、何を確認して答えるんだろう」と手が止まる。
そんなときは、いきなり回答欄を埋め始めなくて大丈夫です。
最初に確認したいのは、今年使うチェックシートと提出方法。その次に、回答の根拠になる自社のルールと実際の業務です。
この記事では、損害保険代理店の2026年度の自己点検について、依頼が届いてから何を確認し、どう回答を進めるかを整理します。

2026年10月13日、金融庁が代理店の規模・特性に応じた運用を改めて要請
2026年10月13日、金融庁は国土交通省と連名で、損保協会に代理店業務品質評価制度の適切な運用を要請しました。一部の代理店から、過度な体制整備や、十分な対話のない委託契約解除の示唆について意見が寄せられ、調査でも改善が必要な事例が確認されたためです。
小規模代理店や自賠責保険のみを扱う代理店では、自社の規模・取扱商品・業務実態に合う対応を、所属保険会社と具体的に確認することが大切です。要請では、合理的な理由のない一律の改善期限や対応を求めないこと、一般代理店と自賠責専業では必要な業務品質の項目が異なることに注意を促しています。
今回の要請は、自己点検の免除や設問の即時変更を知らせるものではありません。 現在のシートや期限は所属保険会社の案内に沿って確認してください。損保協会には設問・水準が規模や業務特性に合うかの確認・検証も求められています。今後の見直しや公表資料の更新を引き続き確認しましょう。
まず、去年のファイルより「今年の案内」を確認する
去年の回答は参考になります。ただ、今年の回答を始める場所として、そのまま使ってよいとは限りません。
日本損害保険協会の2026年度版自己点検チェックシートは、法令改正等を踏まえ、2026年6月1日付で追加改訂されています。まずは所属保険会社の案内に従って、今年使用するシートを確認してください。 日本損害保険協会
入手先と提出先にも注意が必要です。
損保協会の案内では、自己点検チェックシート等のやり取りに「代理店登録等の共通プラットフォーム」、通称「登録PF」を利用します。アクセス方法も、所属保険会社からの案内に従う形です。 日本損害保険協会
「去年は担当者にメールで送ったから、今年もそうしよう」と決める前に、今回の案内を読み直しておきましょう。
また、提出期限は所属保険会社の指定を確認します。損保協会の手引きでは9月末までの提出を推奨していますが、これを全代理店共通の締切と読み替えないようにしてください。 日本損害保険協会の資料
ここで、期限だけでなく、社内で誰が取りまとめ、誰が最終確認するかも決めておくと進めやすくなります。
2026年度版では、使うシートの種類にも注意
「保険代理店の自己点検」といっても、全代理店がまったく同じ条件で回答するわけではありません。
たとえば、自賠責保険のみを扱う代理店については、専用のチェックシートが用意され、業務の実態に合わせて設問が見直されています。一般代理店向けのものを見て「うちには関係のない設問ばかりだ」と悩む前に、使用するシートが自社に合っているか確認したいところです。 日本損害保険協会の資料
乗合代理店では、業界共通版を登録PFから提出すると、制度に参加する所属保険会社への提出が一括で完了します。ただし、保険会社独自のシートもあるため、共通版だけで必要な対応がすべて終わるとは限りません。 日本損害保険協会の資料
募集人向けの点検も、前年と同じと思い込まない方がよい部分です。2026年度は、募集人用のExcel形式のチェックシートではなく、代理店がアンケートツール等で活用できる設問データが公開されています。 日本損害保険協会の資料
つまり、最初の作業は「去年の回答をコピーする」ではなく、自社が今年、何を使って、どこまで点検するのかを確かめることです。
なお、代理店用チェックシートのサポート対象はMicrosoft Excelの所定のxlsx形式です。別の表計算ソフトで保存すると正常に処理できない場合があるため、編集環境にも気をつけてください。 日本損害保険協会の資料
回答するときは「規程・実際の業務・確認資料」を見比べる
使うシートが分かったら、ようやく中身です。
ここでおすすめしたいのが、一つの設問について、次の三つを見比べる進め方です。
自社ではどう決めているか。実際にどう仕事をしているか。その状況を何で確認できるか。
たとえば、募集人への教育に関する設問を考えてみます。
社内規程には「定期的に研修を実施する」と書いてある。年間の教育計画もある。けれど、実際に誰が受講したのかまでは、まだ確認できていない。
この状態で、規程があることだけを理由に「実施できている」と判断してしまうと、点検したかった部分が抜けてしまいます。
逆に、研修は実施していても、記録をまだ探せていないだけかもしれません。こちらは、まず実施状況を確認する必要があります。
整理すると、こんな見方になります。
| 見るもの | 確認したいこと | 教育・研修を点検する場合の例 |
|---|---|---|
| 社内規程・計画 | 自社では何をすることになっているか | 教育方針、年間教育計画 |
| 実際の業務 | 計画やルールに沿って実施しているか | 研修の実施状況、欠席者への対応 |
| 確認資料 | その状況を何で確かめられるか | 使用教材、受講者の記録、研修レポート |
※これは確認の進め方を示す例です。必要な資料や回答の判定は、実際の設問と所属保険会社の案内に沿って確認してください。
規程は「こうする」という約束で、記録は「実際にこうした」と確かめる手がかりです。
どちらか一つを見るだけではなく、両方がつながっているかを見ると、回答の根拠がはっきりします。

迷った項目は、無理に「できている」に寄せない
自己点検を進めていると、「たぶんやっている」「担当者に聞けば分かるはず」という項目が出てくるかもしれません。
そこで一度、何が分からないのかを分けてみてください。
ルールが決まっていないのか。ルールはあるけれど実行できていないのか。それとも、実行したかどうかをまだ確認できていないのか。
この三つでは、次にやることが違います。
ルールがなければ、誰が何をするのかを決めるところからです。実行できていなければ、どこで止まっているかを確認します。状況が不明なら、担当者や資料に当たって事実を確かめます。
たとえば、欠席者への追加研修について、担当者が「後日説明しました」と言っている場合。その説明をもとに、いつ、何を伝えたのか、確認できる資料があるかを調べることはできます。
ただし、点検に間に合わせるために、確認できていない受講日や参加者を埋めてしまっては、何を確認したのか分からなくなります。
後から確認した内容を記録するなら、当時から残っていた記録と、今回確認して作成した記録を区別しておきましょう。
回答をきれいにそろえることより、今の状態を取り違えないことが先です。
損保協会も、自己点検チェックシートを、代理店が自ら体制整備の状況を点検し、改善を進めるためのツールとして位置づけています。 日本損害保険協会
去年の回答より、先に見たい「去年の宿題」
前回の自己点検を開いたら、回答欄だけでなく、保険会社からの指摘や、自社で決めた改善事項も見てみてください。
たとえば、前回「研修を欠席した人への対応が確認できない」と指摘されていたとします。
今年の確認で見たいのは、「今年も研修をしたか」だけではありません。欠席者への対応方法を決め、その方法で実際に対応し、確認できるようになったかです。
ここで「対応する予定」のまま止まっていたら、誰がいつまでに進めるのかを決め直す必要があります。
提出までに完了できないものは、未完了の事実と今後の対応を分けて整理し、回答方法を確認しましょう。顧客への影響がある問題なら、書類の提出時期とは切り離して、責任者や所属保険会社への報告・対応が必要かをすぐ確認してください。
前回の結果を使うなら、回答を写すためではなく、前回見つかった問題がその後どうなったかを確かめるために使う。この方が、今年の点検につながります。

自己点検の進め方も、社内規程に入れておく
ここまで進めると、自己点検は担当者が一人で回答欄を埋めるだけの仕事ではないと分かります。
実際の業務を担当者に確認する。必要な資料を確かめる。判断に迷うものは責任者に相談する。不備があれば、その後の対応を決める。
この進め方が毎年変わると、取りまとめる人が替わったときに、また最初から考えることになります。
そこで、自己点検についても、実施時期や担当者、確認方法、不備が見つかった場合の扱いを、社内規程や実施手順に落とし込んでおくとよいでしょう。
社内規程に書くなら、どんな文章になる?
参考として、私たちが提供する保険代理店向けの自己点検・教育管理サービス「TAGNOTE」に収録している規程の一部を紹介します。
TAGNOTE収録「保険業務規定」第16章「自己点検・内部監査・改善」より
第84条「自己点検」第1項
少なくとも年1回、損保協会の最新の自己点検項目および所属保険会社の基準を踏まえ、実態と証跡に基づく自己点検を行う。
この例では、自己点検を実施することに加えて、何を基準に、何を根拠に点検するかを定めています。「去年もそう回答したから」ではなく、実際の業務と確認できる資料に基づいて判断する、という考え方です。
不備が見つかった後については、次のような条文を収録しています。
第87条「不備・改善管理」第1項
不備ごとに、重要度、顧客影響、原因、暫定措置、恒久対策、責任者、期限および確認者を登録する。
こちらは、「改善します」で終わらせず、誰が対応し、誰が完了を確認するかまで決めるための規程例です。
実際に使うときは、「責任者は誰か」「どこに記録するか」「いつ進捗を確認するか」まで自社の仕事に合わせて具体化すると、動きやすくなります。
※掲載した文章はTAGNOTEの収録規程例であり、法令本文や損保協会の公式規程ではありません。自社の規模・業務内容、適用される法令、所属保険会社の基準等に合わせて確認・調整してください。
TAGNOTEでは、このような保険業務規程の参照に加え、教育計画や受講報告、管理者の確認記録を扱えます。自己点検で教育や規程の整備に課題が見つかったとき、その後の日常管理にもつなげるためのサービスです。
登録・利用開始後は、ここで紹介した部分だけでなく、TAGNOTEに収録している保険業務規程一式を確認できます。

最初の一件を、根拠まで確認してみる
自己点検の案内が届いたら、まず今年のシート、提出方法、期限を確認する。そのうえで、一つの設問について、自社の規程と実際の業務、確認資料を見比べてみてください。
すぐに回答できれば、その進め方で次へ進めます。
途中で手が止まったら、「何を確認できていないのか」が分かったということです。担当者に聞くのか、資料を見るのか、ルール自体を見直すのか。次にやることを決められます。
自己点検のために、最初から資料を全部作り直す必要はありません。一方で、規程があるだけで、実施状況の確認まで済んだことにはできません。
今年の設問に対して、自社は何を根拠に答えるのか。
まずはそこを一件ずつ確かめる。それが、回答を埋めるだけで終わらない自己点検の始め方です。
運営:株式会社Arima Estate · 編集方針・著者情報
出典・参考資料
- 日本損害保険協会「自己点検チェックの取組み」
該当箇所:2026年6月1日付の追加改訂、登録PFでのやり取り、募集人向け点検項目データ
- 日本損害保険協会「自己点検チェックの取組み」の手引き(2026年度版)
該当箇所:10〜13ページ:利用環境・実施手順・推奨時期。20ページQ2:参加する所属保険会社への提出。
- 日本損害保険協会「自己点検チェックシートの改訂について」
該当箇所:2026年5月、2ページ(PDF3ページ目):自賠責のみ取扱代理店専用チェックシート
- 金融庁・国土交通省
該当箇所:2026年10月13日「損害保険業界の信頼回復に向けた取組の適切な運用について(要請)」および別紙
- 日本損害保険協会
該当箇所:2026年10月13日「金融庁および国土交通省からの要請を受けての対応について」
